
早朝覚醒とは?
予定していた時刻より早く起きてしまったり、二度寝ができないと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。その症状は、不眠症のひとつである「早朝覚醒」かもしれません。早朝覚醒は加齢とともに増加するといわれていますが、最近では若年層でも症状で悩む人が増えています。ここでは早朝覚醒の症状のある人の声、原因や特徴、対処方法について紹介していきます。
早朝覚醒の人の声

朝7時に起きたいのに、毎朝5時きっかりに起きてしまう…



朝早く起きてしまい、出勤まで再び寝ようとしても、そこから眠れなくなってしまう…



寝つきはいいけど毎日朝早く起きる現象が続いていて、一生続くのではと不安…
早朝覚醒の原因
加齢による睡眠の変化
老年期になると、眠りが浅くなります。途中で目が覚める回数が増えて、朝早く目覚めることが多くなります。睡眠時間が短くなることに加えて、睡眠と覚醒のリズムが前進する傾向になります。高齢になるにつれて、夕方を過ぎてから眠くなり、朝早く目が覚めるようになったという人もいます。
生活習慣の乱れ
早朝覚醒は、生活習慣の乱れが原因となることがよくあります。たとえば、極端な運動不足は睡眠の質が低下して、早朝覚醒につながります。
うつ病の症状
典型的なうつ病では、早朝覚醒が生じます。外がまだ暗いうちに目が覚めてしまい、再び寝つくことができません。同時に、体が重く倦怠感が生じることが多いです。入眠障害、中途覚醒、熟眠障害などの不眠の症状も併発することがあります
ストレス
人間関係、生活環境の変化など、さまざまなストレスがあります。私たちの体は、ストレスを受けると、自律神経の中で交感神経の活動が高くなります。その結果、血圧、脈拍が上昇します。眠っているときに脳が興奮してしまいます。そのため、睡眠の質が低下して、早朝に目覚めることが多くなります。
更年期障害
更年期になると、女性ホルモンのバランスが崩れること、自律神経の乱れが生じることによって、不眠が出現します。眠りが浅くなり、何度も目が覚める悩みが出現します。早朝覚醒は、ホットフラッシュ、抑うつ、不安、関節痛、ストレスと関連していることも報告されています。
早朝覚醒の治療適応
以下に当てはまる方は、「早朝覚醒」治療適応となります。
- 朝方に予定より早く目が覚める。
- 二度寝することが難しい。
- 日中の倦怠感や集中力の低下、食欲の低下。
- 長らく熟眠できていない。
※基準はそれによって本人が苦痛や支障を感じているかどうかになります。
早朝覚醒の治療薬
デエビゴ
日本で創薬された新しいタイプの睡眠薬で、中途覚醒や早朝覚醒、熟眠障害に広く用いられています。2019年、アメリカ食品医薬品局が、成人の不眠症の治療薬として承認しました。
ベンゾジアゼピン系の睡眠薬と比較して、デエビゴを長期間連続で使用しても耐性が生じにくく、依存症になるリスクが低いというメリットがあります。
作用機序としては、脳内にある覚醒状態を維持する神経ペプチド(オレキシン)の働きを低下させて眠りを促します。
服用してから8時間程度でデエビゴの血液中の濃度は、最高血中濃度の25%程度まで減少します。朝になると内因性のオレキシンが増えてくるので、日中の活動に影響が少ないと考えられています。睡眠・覚醒の周期に関係する生理的な物質の働きを調整し、睡眠状態に仕向けていくお薬のため、本来の眠気を強める効果があります。
効果の強いベンゾジアゼピン系睡眠薬と比べると、依存性や副作用が少ないという特徴があります。作用時間も早く、いつでも就寝できる状態になってから早めの服用が推奨されています。


一般名 | レンボレキサント |
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分類 | オレキシン受容体拮抗薬 |
薬が効くメカニズム | 覚醒の維持に重要なオレキシンの働きを制御 |
薬の特徴 | ■ 本来の自然な眠気を強くする ■ 中途覚醒、熟眠障害、早朝覚醒に有効 ■ 依存性が少なく、耐性を作らない ■ 2.5mg,5mg,10mg錠があり、通常は5mgから開始 |
作用時間 | 4時間程度 (最高血中濃度到達時間:2時間) |
効き目 | マイルド |
用法・用量 | 5mg錠を1日1回就寝前に(最大10mgまで) |
値段 | 高価 |
主な副作用 | ・傾眠(10.7%) ・頭痛(4.1 %) ・疲労(2.9%) ・異常な夢(1.8%) ・浮動性めまい(1.6%) ・睡眠時麻痺(1.6%) ・体重増加(1.6%) ・悪夢(1.4%) |
留意点・注意点 | ■ 悪夢や金縛りの副作用がしれれている ■ 覚醒を促す効果から食欲が増える可能性あり ■ 抗真菌薬(イトコナゾール・フルコナゾール)、 抗菌薬(クラリスロマイシン・エリスロマイシン)、 抗不整脈薬(ベラパミル)と併用注意 |
リスミー
入眠障害、熟眠障害に対して広く使わている睡眠薬です。短時間型ベンゾジアゼピン系睡眠薬に分類されます。
リスミーは、体の中で代謝されることで4つの物質に変わります。それらが効果を発揮するようにできていて、プロドラックと呼ばれます。そのため、作用がマイルドなのに短時間型の睡眠薬の中では作用時間が長く、穏やかに睡眠をサポートする場合に幅広く使われることがあります。
ルネスタと同様に、覚醒に働いている神経活動を抑えることで、眠気を促していきます。「疲れきって眠ってしまうとき」に近い状態を作り出し、眠りを促します。
ルネスタとは違い、睡眠薬としての働きのほかに、筋弛緩作用や抗不安作用もあります。このため不安や緊張が強い場合には、リラックスした睡眠をもたらしてくれます。
作用時間としても睡眠時間の全体をカバーしてくれているため、入眠障害だけでなく熟眠障害にも効果が期待できます。依存性を形成するほど強いお薬ではないので、効果の強さは他のベンゾジアゼピン系と比べるとややマイルドになります。


一般名 | 塩酸リルマザホン |
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分類 | 短時間型ベンゾジアゼピン系睡眠薬 |
薬が効くメカニズム | GABA受容体に結合し、神経活動を抑制して眠気を促進 |
薬の特徴 | ■ 寝つきを良くし、熟眠効果も得られる ■ 睡眠時間全体をカバー ■ 1mg,2mgがあり、通常は1mgから開始 ■ 抗不安作用もあり、落ち着いて床に入れる |
作用時間 | 10.3時間 (最高血中濃度到達時間:3時間) |
効き目 | ややマイルド |
用法・用量 | 1mg錠を1日1回就寝前に(最大2mgまで) |
値段 | 安価 |
主な副作用 | ・眠気(1.48%) ・ふらつき(0.65%) ・倦怠感(0.55%) ・口渇(0.50%) ・頭重感(0.45%) |
留意点・注意点 | ■ 朝方に眠気が残ってしまうことあり ■ 軽度の筋弛緩作用があり、高齢者では転倒に注意 ■ 高齢者にはせん妄に注意 ■ 効果が増強し依存形成するためアルコールとの併用注意 |
【漢方】酸棗仁湯(サンソウニントウ)
酸棗仁湯は、体力が低下して、心身が疲労している人の不眠の改善によく用いられる漢方薬です。神経症、自律神経失調症による不眠の治療などにも用いられています。
不眠のタイプとしては、特に覚醒と睡眠のリズムが乱れて、夜間目が冴えて眠れない、夢が多い、熟睡感がないといった症状があるような場合に適します。
ストレスが高くいつも緊張してる人は心身を緩める作用があり、寝つきに対しての効果が期待できます。
効果の確立されている睡眠薬と比べると効き目が弱いですが、いきなり睡眠薬を飲むのに抵抗のある場合は一度効果を試してみても良いかもしれません。


一般名 | 酸棗仁湯(さんそうにんとう) |
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分類 | 医療用漢方 |
効果・効能 | 体力が低下して、心身が疲労している人の不眠の改善 |
薬の特徴 | ■ 主役の”酸棗仁”に穏やかな鎮静作用がある ■ 西洋薬の様なキレはないが副作用は少ない ■ 抗うつ薬(フルボキサミン)との併用でも服用可能 |
用法・用量 | 1日7.5gを2~3回に分割し、食前又は食間に経口投与 ※年齢、症状に応じて増減 |
値段 | やや安価 |
主な副作用 | ・胃の不快感 ・食欲不振 ・吐気 ・下痢 |
留意点・注意点 | ■ 他の漢方と併用時は偽性アルドステロン症に注意 ■ かえって食欲が無くなる事がある |
治療する上での注意点
・睡眠薬は命に関わる病気に対する薬ではないですが、中枢神経系(脳=覚醒中枢、睡眠中枢)に作用する薬ですので、「薬の量を変更する」「薬剤を変更する」「意図的に中断する」という行動は自己判断で行わないようにしてください。
・比較的、依存性や耐性、副作用が少ないと知られている当院の睡眠薬であっても、急に断薬をすると反跳性不眠(以前より眠れなくなる事)を起こす原因となります。
・薬を減らすときは医師の診察の元、「用量を少なくする(漸減法)」「飲む間隔を空ける(隔日法)」で行います。